とても薄い肌の角層
スキンケアは大切だ。はい、そのとおりです。
では、ここでいう“スキン”は皮膚のどの部分のことか、ご存じですか?
「表皮でしょ」と即答された方、ご名答。皮膚は上から順番に、表皮、真皮、皮下組織でできています。
ちなみに皆さんのバッグや財布などの革製品は、真皮を加工したものです。
ではさらに質問。顔の表皮の一番上の“角層”と呼ばれる部分は、どのくらいの厚さがあるでしょうか?
顔の中でも部位によって厚さがちがいますが、角層は、概ね10~15マイクロメートル、と教科書に書かれています。
と言われてもピンと来ませんよね。マイクロメートルなんて単位は日常生活でほとんど使いません。
10マイクロメートルをミリの単位に直すと、0.01ミリメートルです。
それでもさっぱりイメージできない、という方のために、身近なものでたとえます。
キッチンにある食品用ラップフィルム(サラン○○○、クレ○○○、とかいう、アレです)を思い浮かべてください。
あのフィルムの厚さが10マイクロメートルです。
ですから、お顔の角層はだいたいラップ1枚分くらいの厚さ、ということになります。
角層のあまりの薄さに驚きませんか?この薄っぺらな角層があるおかげで、体内の水分が蒸発して失われることなく、私たちは地上で生活できています。
カエルや魚には角層がないので、水に浸かっていないとだめです。
そういう意味でも、表皮の角層は、私たちのからだ全体を包んだラップフィルムと言えるかも知れません。
スキンケアで最も重要なのは角質ケア
スキンケアで最も重要な部分は、角層のケアとお考えいただいてよいでしょう。
おおざっぱな表現になりますが、スキンケアは“角層ケア”と言いかえてもよいと思います。
この角層=ラップ1枚分の世界をいかによい状態に保つかがスキンケアの勝負どころなのですが、ローマは一日にして成らず、日々の努力が必要です。
ここで、アメリカの皮膚科学会(AAD: American Academy of Dermatology)のホームページにでている、日々のスキンケアの努力ポイントが秀逸だったので、紹介いたします。
Skin care on a budget(英文・外部リンクへ)
- 寝る前と、起きた時には顔を洗う。12時間以上、何もしない状態で放置してはだめ。清潔に。
- 毎日、日焼け対策をする。年余にわたる日焼けの蓄積は、やがて、しわ・しみ・果ては皮膚癌の原因になる。
- 保湿剤を塗るベストタイミングは、洗ったあとすぐの皮膚がまだ湿っているとき。
- 使用するスキンケア製品の数は限定する。お金と置き場所の節約になる。
- 一つで複数の機能をもつ製品(dual-function product)がおすすめ。高価な製品が必ずしも効果が高いとは限らない。
- 費用対効果のよい製品を選ぶために、含有成分にはこだわる。アンチエイジングにはビタミンAやαヒドロキシ酸を含むものを選ぶ、など。
まとめ
角層=ラップ1枚の世界を守るためには、毎日の不断の努力が必要なのです。
ですから、お金と時間をかけすぎず、無理なくできることが、毎日続けるためのコツなんですね。
みなさんも、日々のスキンケアを楽しく続けるために、どんな製品がよいか考えてみて下さい。
先生紹介
安部 信吾(あべ しんご)
1967年生まれ、香川県出身。会社員を経て2004年に東海大学医学部卒業。日本小児科学会専門医、日本アレルギー学会専門医。現在、パルモア病院小児科に勤務。
趣味:音楽(聴くだけじゃなくサックス演奏も。なかなかうまくなりませんが。)
お子さんの皮膚の状態について相談を受けることがよくあり、どうすれば上手なスキンケアが実現できるか、さまざまな視点で考えながら、日々の診療をしています。
ヒントになるのは、主として医学論文で示される数々のデータです。
大人もこどもも、スキンケアの基本は同じだと思いますので、自分なりに解釈した内容を織り交ぜつつ、わかりやすく紹介していきたいと思います。
皆さんのスキンケアに役立てていただければ幸いです。